March, 2012
     

  「信じる」SHINJIRU  
 
 
 

3月になりました。
 本当に早いものですね。
 今年の冬は例年より冷え込みましたが、一雨ごとにあたたかくなって来た。
 三寒四温を繰り返しながら、こうして春は必ず、一歩づつ近づいて来てくれますね。

 昨年の3月11日。
 あれから、間もなく一年がたとうとしています。
 私たちはもう、あの日の前に戻ることは出来ない。
 今でも、あの日のことを思い出すと、遠くから見ていただけの私ですら、胸が苦しくなる。ましてや被災地の方々のお気持ちは察するべくもありません。
 幾多の苦しみ、悲しみを乗り越え、前に進み始めて一年がたとうとしている。

 私たち日本人の多くの魂が、あの日を境に目覚めたと信じています。
 目覚めた魂たちは、それぞれの生きる場所で、新しい生き方を模索し始めている。
 何かが少しづつ、変わって来ている。
 闇を照らすのは、私たち一人一人の心の灯。
 やがて、大きな明かりとなって、世界を照らす光となる。
 そう信じています。

 ここで、あらためて、東日本大震災で失われた多くの尊い命に祈りを捧げます。
 私たちが、必ず、目覚めて・・この日本から変わって行けますように・・。
 子どもたちの未来のために、私たち大人が変わって行けますように。
 どうか、天から見守っていて下さい。


 先月、カンボジアに行って来ました。
 以前から支援している孤児院「クルサ-・リッリエイ」の子どもたちを訪ねました。
 私は子どもたちに逢うのは六年ぶりでした。
 当時、赤ちゃんだった子がもう六歳になっている。
 中学生だった子は大学生に。
 この六年、カンボジアを訪れることは出来ず、ただ、寄付を仲間たちに預けて持って行ってもらっていました。(仲間たちは毎年、子どもたちに逢いに行ってました)
 今回の旅で本当に驚いたのは、子どもたちの笑顔とその輝く瞳です。
 私たちのバスが到着して、歩いて入って行くと子どもたちの歓声が聴こえて来た。
 皆、一年を首を長くして待っていてくれるのです。
 私は子どもたちのその変化に感動しました。
 彼らの瞳がキラキラしていて、愛と希望に溢れている。
 人の力はすごい。愛されること、信じること、それが子どもたちを変えて行った。
 お金を送っていただけでは、こんなに変わることは決してない。
 +ONEというボランティア・グル-プの仲間たちが七年間逢い続けて来た結果。
 私は彼らの熱く深い愛にも感動しました。
 そして、あらためて、子どもたちに逢い続ける大切さも痛感しました。

 さて、今回のツア-では、カモノハシプロジェクトが支援しているファクトリ-(工房)も訪ねました。

 
     
   そこは、働き口のない村の女性たちのために作られた工房です。
 カンボジアは本当にまだまだ貧しく、仕事がないために、タイまで出稼ぎ(人身売買が多い)に行かなくてはならなかったり、女性や子どもたちの置かれている状況はとても厳しい。そんな中で、彼女たちに技術を教え、働く場所を提供しているのです。
 そこで、若い女性に質問をしました。
 「どんな時が幸せですか?」
 「家族が一緒にいて諍いのない時」
 
 「此処で働くことが出来て、何がよかったですか?」
 「仕事があること自体がありがたい」と答えました。

 日本人の女の子たちは、予想もしなかった答えに驚いていました。
 私たちは、こうして、現地に行くことによって、学んだり、気づかせてもらったりしている。ありがたいことです。

 カンボジアでは家族が一緒にいることをとても大切にしている。
 お金も確かに必要だけど、貧しくても家族が一緒にいられることを望む。
 また、物質的に何でも手に入っている私たちの社会では見えない「豊さ」や「大切なもの」に気づかされる。自分たちがどれだけ恵まれているかも知る。
 日本の子どもたちももっと、こうした国に実際に行ってみるといいなと思います。
 幼い子どもたちが働かされています。学校に行きたくても行けない子どもがほとんどです。工房の中に少し本がありました。休憩時間に、その本を手にとって一生懸命読んでいる女の子がいました。勉強したいんだと思います。

 視察の翌日は、「クルサ-・リッリエイ」の子どもたちと一緒にアンコ-ルワットや周辺の寺院を訪れたり・・。その時に、私はある忘れられない場面に出くわしました。
 そこは日本人、中国人観光客の多いシェムリアップです。
 私たちがある寺院を訪ねて、子どもたちと一緒に歩いていた時のことです。
 向こうの方に音楽を奏でる人たちがひとかたまりになって座っていた。
 孤児院の女の子の一人が「あれは、祝婚歌なの」と教えてくれました。
 通り過ぎかけて気づいたのは、演奏している方々が皆、地雷で脚を失ったり障害を持った人々だったこと。私は少し行きかけてから、やはり、寄付したいと思い踵を返しました。すると、私の前を、一人の女の子が駆け戻って、自分のバッグからお金を取り出し、その方たちに手を合わせて、布施していた。その子は十七歳の女の子。いつも、陽気でふざけてばかりいるソクッティという子。
 おこずかいなんて、きっとほとんど持っていないと思う。それでも、そうして布施する心を持っている。素晴らしいと思いました。
 観光客の誰もが知らん顔で通り過ぎる中、その子はちゃんと慈悲の心を持っていた。

 このような経験は、フィリピンでもしたことがありました。本当に少ない中から誰かのために何かをしようとする。欲がなく、思いやりがある。
 悲しい思い、寂しい思い、辛い思いをすると、人はやさしくなる。
 「艱難汝を珠にす」という言葉がありますね。
 本当にその通りだと思います。

 私たちはこうして、フィリピンやカンボジアの孤児院の支援をさせて頂きながら、子どもたちから「愛する」ということや「やさしさ」や「慈しみ」や「本当の豊さ」、たくさんのことを学ばせてもらっています。

 今回のカンボジアの旅で一番強く思ったこと。
 「愛する」ということの中に「信じる」ということが含まれる。
 子どもたちは愛され、信じることが出来て、そして希望を持った。
 大きな子に尋ねると、皆、具体的に夢や目標を持っていた。そしてそれに向かってちゃんと努力していた。
 本当に愛されて、信じることが出来た時、人は強くなり、自分の夢を信じて、自分を信じて生きて行ける。
 「愛する」ことは「信じる」こと。
 人間って素晴らしいですね。

 これからもチベット体操の愛の輪を広げて行きます。
 自分を愛すること、信じることを伝えて行きたい。
 そうして初めて、その愛の輪が周りに広がって行く。

 チベット体操をして、ハ-トのチャクラを開き・・愛全開。
 あたたかな、素晴らしい春が皆様に訪れますように。

 合掌
 ありがとうございます。
 
  2012年3月   梶本恵美